作品解説


今回「時をかける電話」を作るにあたって、演出としてどのようなことを考えていたのかを解説します。

 

 

1話  オープニングの意味合いを強く持たせるつもりで書きました。初めにいきなり電話のシーンを持ってくることで今回の話のキーである「電話」の印象を強く持たせると共にどういうシチュエーションなんだろう?と一度謎を抱かせて観客を引きつける意図があります。まずドラマとか映画の映像的なイメージが浮かんだのでそれを上手く演劇に落とし込むのが難しかったです。

 

 

2話 この「時をかける電話」は「亡くなった方に電話を繋ぐ電話交換局」を軸にした半短編集なので、まずは1話とあわせてその設定から奇を衒わない、スタンダードな話を見せようという意図で書きました。ドラえもんの「おばあちゃんの思い出」なんかに影響を受けている、気がします。あと個人的に脚本を書くにあたって全てを説明せず、言葉の要素だけで観客にキャラクターの裏にあるものを伝えたいな〜と思っていて、「肉じゃがの作り方、母さんから教わったんだね」というセリフは特にそれを意識しています。

 

 

3話 1番最後に思いついた話です。2話と4話が割としっとりした話だったのでそれとは違う雰囲気のお話を挟みたいなと思い、少しコメディ色の強い話にしました。設定が上手く思いつかず苦労したのですが、最終的に「過去に電話をかける」という設定を上手く活かせる話になったんじゃないかなと思います。違う時代の同じ場所で同じものを探すという構図、ロマンですよね。

 

 

4話 最初に思いついたお話です。別のサークルで同じ脚本を先に短編映画にもしてもらっています。この話を思いつくのと同時に「死んだ人に電話をかける」というテーマを思いつき「時をかける電話」が出来ました。最後に「あ〜、なるほど!」となる話が個人的にすごくすごくすごく好きなので「あ〜、なるほど!」を目指しました。今回ゲキケンで同じ脚本を出すにあたって、映画サークルの方で出した脚本から性別を固定する描写を抜いて、結果映画では男女の話だったのが今回は女の子二人の話になりました。特に演出上の意味はないです。意味がない、ということが重要な気がしています。

 

 

5話 こういう短編集の場合、最後は作中にずっと登場していたキーパーソンが主人公になるのがセオリーですよね。管理人から誰に電話をかけさせよう、と思った時、電話をかける相手は管理人が管理人をしている理由であってほしいと思っていたので、息子(娘)が思い浮かびました。この話は特に、何も知らず明るく話す息子と全てを知っていて暗い面持ちの母親との対比を意識しています。第2話のコメントでも書いたように私は今回の脚本を書くにあたって全てを説明せず、会話中の要素で観客に物事を伝えることを意識したのですが、この脚本は全編通して第三者への説明っぽくならないように、なるべく2人だけの世界にすることを心がけました。