基礎練習

古場で実際に行っていた基礎練習の一部をまとめました。


腹式呼吸

舞台上でお腹から声を出すための腹式呼吸の訓練です。

 

①仰向きに寝そべり、軽く息を吸ってから腹内の空気を吐き切る

②10秒間で腹内が一杯になるように息を吸う(常に一定の量で吸う)

③5秒間息を止めたままキープ

④10秒間で腹内が空っぽになるように息を吐き切る(常に一定の量で吐く)

⑤これを何度か繰り返す

 

キチンとお腹が膨らんだりへこんだりしたら合格です。

基本は10秒吸って5秒止めて10秒で吐き切りますが、慣れてくると5秒、10秒、10秒、のように秒数を変化させる事もあります。

ポイントは常に一定の呼吸量です。配分を間違えて最初にゆっくり最後に一気に、などにならないよう心がけましょう。


まさまし

滑舌を良くするための練習です。

 

まさましますませまそ

さまさみさむさめさも

ばらばりばるばればろ

らばらびらぶらべらぼ

たさたしたすたせたそ

さたさちさつさてさと

ならなりなるなれなろ

らならにらぬらねらの

だらだりだるだれだろ

らだらぢらづらでらど

だまだみだむだめだも

まだまぢまづまでまど

さらさりさるされさろ

らさらしらすらせらそ

ばまばみばむばめばも

まばまびまぶまべまぼ

 

例えば一つ目の「まさましますませまそ」ならその後に「みさみしみすみせみそ」「むさむしむすむせむそ」といったように「まみむめも」全てと「さしすせそ」を組み合わせます。そこでようやく次の「さまさみさむさめさも」に進みます。

初めのうちは戸惑っている役者も多かったですが、稽古も終盤になると全員スムーズにこなせるようになっていました。


外郎売り

こちらも滑舌を良くするための練習です。

 

拙者親方と申すは、お立ち合いのうちに、ご存知のお方もござりましょうが、お江戸を発って二十里上方、相州小田原一色町をお過ぎなされて、青物町を登りへおいで出なさるれば、らんかん橋とらやとうえもん、只今は剃髪いたして、円斎と名乗りまする。元朝より、大津篭りまで、お手に入れまするこの薬は、昔ちんの国の唐人、外郎という人、我が朝へ来たり、帝へ参内の折りから、この薬を深くこめ置き、持ちゆる時はいちりゅうずつ、冠の隙間より取りいだす。よってその名を帝より、とうちんこうと賜る。即ち文字には、「頂き、透く、におい」と書いて、「とうちんこう」と申す。只今はこの薬、殊の外、世上に広まり、方々に偽看板をいだし、イヤ小田原の、灰俵の、さん俵の、炭俵のと、色々に申せども、平仮名をもって「ういろう」と記せしは、親方円斎ばかり。もしやお立ち合いのうちに熱海か塔の沢へ湯治においでなさるるか、または伊勢ご参宮の折からは、必ず門違いなされまするな。お上りならば右のかた、お下りなれば左側、八方が八つ棟、表が三つ棟玉堂造り。破風には菊に桐のとうの御紋を御赦免あって、系図正しき薬でござる………

 

ここに掲載したのは全体のほんの一部です。有名な物なのでネットで「外郎売り」と検索すればフルバージョンが見られると思います。

実際の稽古ではこれのフルバージョンを一人一文、交代交代で読み上げます。